墓地の写真を撮ったら
帰宅途中、信号待ちをしているとき、右手の墓地に気づいた。たそがれどきで、非日常的な風情があったので写真を撮ってみた。
写真が液晶でみると意外なほどに陰鬱で、怖くなったのですぐに消した。
ここでなにかスイッチっぽいのが入った。
顔を上げると、風景がどことなくいつもより不気味に見える。
なんとなく視線を感じる。
スマホの電池が切れた。写真撮ってすぐだ。
霊を怒らせてしまったか。
やっぱり墓場は写真に撮ってはいけなかったんだ。
一気に幽霊に敏感なモードになって、風景が怪談の世界になった。 前のトラックは、荷台と席のあいだの窓から腕だけがみえていて、不気味だった。
いつも通っている国道沿いだったが、普段は気づいていない建物があることにも気付いた。
古い歯医者が、ガラス張りの広い玄関があるビルにあった。となりは交番だった。
会社のモードはあらかた消え去り、不思議な世界感だった。
そして、世界の見え方というのは意外なあっさりと切り替わるものだとおもった。
いつも「本当」とか、「リアル」だとか思ってる現実は、実は絶対的なものではないかもしれない。そうでなく、自分の傾向とか周囲の環境などの影響でそういう「見え方」をしているだけかもしれない。幽霊はどちらかといえば「リアル」ではない。でもスイッチが入ると、身近に感じられる。
日常のモードと、そのモードのなかから見える景色だけが唯一ではないということが感じられた出来事だった。