masatoの日記

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ジャン=リュック・ナンシー『恋愛について』を読んだ

読んだ。10~15歳向けに開かれた講演会で、フランスの哲学者ジャン=リュック・ナンシーが語った内容を文字おこししたもの。講演当時のナンシーは68歳。現在77歳。

恋愛について (小さな講演会)

印象に残った言葉

1.

愛するとわかるのは、私たちは一人のときは決して本当にいい状態では生きられないということです。私たち人間はひとりぼっちで生きるのにも、大きなグループで群れて生きるのにも向いていないのです。といっても、相手と一緒にいるのは単に「心地よい」からではありません。それだけではなくて、相手といると「何かが生じる」ということがわかるからです。その人といると「何かが起きる」ようなそんな相手と関係を結んで生きるよう、私たちはできているのです。

「二人」でいる意義を示す言葉。「一緒にいるとたのしい、おちつく」を越えている。深い。

2.

十八世紀のスコットランドの哲学者ヒュームはこんなすごいことを書いていた。人の美しさは、誰かから求められているって言うその人の気持ちの表れだってね。こういう考え方は、グラビア雑誌とかに出てくる美の観念を修正してくれるよね。

「うつくしさ」は個人の所有物であるという認識をひっくり返す見方。「誰かから求められている」の「誰か」は、本書の文脈からして具体的には「愛」を与えて/与られている人か。ナンシーがいってる「グラビアとかにでてくる美」っていうのは、「疵がない」とか「そそる」とか、モノとしての性質のことと推察する。完全に商品としての。客観的な基準で優劣を定めているということは、すなわち相対的なクオリティの競争であるということだ。だからそこでは、1級品が君臨して、2級、3級みたいに優劣が生まれる。排除されるものが生まれ、嫉妬が生まれることになる。そういうことじゃないんだよ、っていうことか。一方、比較とかじゃなくて、誰かから求められている人の発する美しさは、見る人のこころを穏やかにする何かがある。

この本をよんだ理由

哲学者の語る恋愛観に興味があった。恋愛というテーマに正面から向き合うのは照れみたいなためらいがある。しかしそれは、そのことをとても大切だと思っていることの裏返しでもある。この講演は、主に子供向けであり、くだけた口調で語られていたため読みやすかった。哲学書は、専門用語を知っていないと読み解けないものが多い印象。この本は予備知識なしで読めてとっつきやすかった。

著者の印象

ジャン=ジャック・ナンシーのことは、この本で始めて知った。ウィキペディアに掲載されている写真は禅僧のようだ。

ジャン=リュック・ナンシー - Wikipedia

「ジャン=リュック」について

フランス人で「ジャン=リュック」という名前が多いなーと思ってた。それに「=」でつないでるのってどういうこと?と思ったのでしらべてみた。

フランス人によくある名前を6つのポイントでまとめてみた | Spin The Earth

フランス人の中には、聖書に出て来る聖人の名前を2つ並べて1つの名前(ファ-ストネ-ム)としている方々も多く居ます。なぜ2つの名前を付けているのかと言うと、単純に両親が2つともの名前をファ-ストネ-ムとして使いたかったからと言うだけの理由だそうです。

ということらしく、ようするに「ジャン=リュック」はひとつのファーストネームらしいのだ。

長いことの謎が解けた。