masatoの日記

やっていきます

『絶望名人カフカの人生論』は、あのフランツ・カフカのネガティブな名言をあつめた本だ。そのブレることなく徹底してネガティブでありつづける姿勢は、常人にはまねできない。

たとえば、こういうことを言っている。

将来にむかって歩くことは僕にはできません。将来にむかってつまずくこと、これはできます。いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです。

一見してユーモラス。かわいらしささえ感じさせる。そして、この本の効能は、カフカの言葉に触れることで、自分のネガティブさの相対的な軽さに気づくことで、心が軽くなるというもの。だが、もしカフカが本当の本心でこう発していたとしたら、この言葉はおそろしいものであるはず。それは、本当の絶望を呼び起こすトリガーとして作用するかもしれない。

同じ著者(頭木 弘樹さん)による別の本『希望名人ゲーテと絶望名人カフカの対話』を読んでみたら、超リア充ゲーテの言葉との比較から、カフカ単体を読んでいるときにはみえていなかった闇が浮かび上がってきた。

カフカと「わたし」との絶望くらべでは、カフカの圧勝だから「アハハ」ですむ。だが、ゲーテカフカだと、わたしはカフカよりなので、むしろカフカに共感して、彼の言葉にこめられてリアルな絶望がみえてきてしまうようだ。「アハハ」どころではない。